月下満開
薄暗い闇の中
その影を密やかに月が照らす
窓から指す月光は柔らかく、淡い光は幻想をも映し出す
その少年は月が作り出した幻想のように思われた。
目を伏せた横顔は神話の女神のように白く優しい
「・・・・・なんですか」
光を反射した髪と瞳は艶やかに
少し眉を寄せる表情は淡く浮かび上がる
「美しいと思ってね・・・・」
返す言葉は不思議な声音
笑みを刻む唇は妖しく
照明は無く、ただ窓から入る月光が二人を照らす
ふとぼんやりと相手の姿が見えたようで、片方は目を細めた。
その瞳は紫。こんな夜には周りと調律して美しい
窓側で振り向く彼は少年と呼ばれる程の年齢のよう
逆光で顔の表情が影に隠される。
身体の線端から微かに照らされている姿も、嘆息するには充分で
「待っていたのかね・・?・・・」
幻はすぐに消えてしまいそうで、声をかけた。
歩み寄るのは仮面の男。
髪が月の光をはね返して煌めく
その色は今夜の月と同じ薄い金
「貴方が言ったんですよ・・・」
本音は違うとわかって男は何も言わない
ただその仮面のなかでうっすらと目を細めるのみ
「・・・・・ここは桜が見えますから・・・・」
その沈黙に出た本音
「君は馬鹿だな・・・」
何度目かの言葉
それはいつも二人きりの時だけに交わされる
「相手は友情しか抱いてないと知りつつ、恋情を寄せる。
側にいて辛かろう?彼には婚約者もいることだしな。
いっそ、告白して楽になればいいものを。
断られて同じところにいるのが辛いわけではないだろう・・・・君の場合は」
「側にいれればそれでいいんですよ・・・・」
ざわりと後ろの桜が揺れ、少年の髪が宙に舞う
きらきらと光を受けとめて茶色のはずの髪がそこだけ金となる
風に流れて桜の花びらが入ってくる
花が身体に纏わりつき、風と共に踊る
まるで純粋な乙女を愛でるよう
しかし、少年の思いは桜の花びらによって遥か遠くへと飛ばされる
いつも優しく笑いかけるその表情に
さりげなく気遣うその仕草に
胸がひどく痛くなるのを止められない。
それは切なさ。甘美な痛み
でも、その思いは受けとめられることなく空間を彷徨って、消えることなく胸の内を環流する。
意味の無い思い
でも、伝える気はさらさらなくて、心はいつも____さざ波が立っている。
思い切って心を打ち明けるほど強くはなれなくて、
だからといって去っていくほどの意志も無い。
「君は彼のこととなると極端に臆病になるな。」
「・・・・挑発しても無駄ですよ。貴方にとってもこのままの方が都合いいんでしょう?」
「それは・・・・」
ついっと少年との間にあった空気を押しのけて、男は少年の頬に触れる。
滑らかな肌に手を這わせて、唇は耳朶をかむ。
「このことを指しているのかな?」
「・・・・っぁ・・・」
ぴくりと反応を返す少年にくすくすと笑い声を立てて、
「君は耳が弱いな。相変わらず反応が良好だ。」
「・・・っずるい・・・」
あなたはいつもそうですよね。
するりと僕が出した刃をかわす。
いらだたしい、相手のほうが上手過ぎて。
でも、だからこそ、傷つける可能性がない相手だからこそ安心できる。
「君らが不器用で純粋すぎるだけだよ。」
「・・・答えを要求しないときだけ言うんですから、あなたもたちが悪い。」
恋人同士の甘い、優しいものでなく
共犯者同士の独特のゆるく落ち着いた雰囲気
月の下
それは桜と相まって、奏でる小さな音色
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あとがき?
テレビ見て突如思いついたもの。
ある画家さんの作品だったんですけど、あまりに綺麗だったから。このタイトルもまんまその作品のタイトルです。
なんでクルーゼって感じですけど、最近クルーゼ書きたいと思いまして。ついでにこれはキラザフト軍所属設定です。キラが夜の相手してあげてんのね。キラが思い寄せてんのはアスラン(言うまでもなく)まぁ、桜ネタだし。
文体を綺麗に綺麗に〜と書いたからこんなのに・・・・・・。どうですか?雰囲気でてます??
ところで、クルーゼをフルーチェの宣伝の度に思い出す。何故って?
それは私の姉に原因が。あれってCMをZONEがしてるじゃないですか。話せば長いのですが、それで、私があまりに夏っぽい白服で海背景のCMの方を見て、「ZONEってさ、北海道出身ジャン。自分のところまだ雪積もって凍ってるのに、こんな格好させやがってとか思っているんだろうね。」とかいったら姉が「なんか嫌なこと考えてるな〜」とか言いまして。「フルーチェ一回も食べたこと無いんだよ。食べたいね」って話してて。それで、またジャスコかどこかのCMで、フルーチェの安売りしてたんで、「あ、ねぇねぇ、フルーチェ99円だって。99円。」そしたらその言葉に反応した姉が「え?クルーゼ99円?」・・・・爆笑しました。安すぎ。つ〜か怖い。売ってたら、とりあえず、買って仮面でもはがすかとか思ったり。