「守りたい人が、いるんだ」

「誰?」

「・・・・・・友達。」


照れくさそうに笑う彼。
分かっていたことだ。
けれど、面と向かって言われるとどうにも堪える。

自分だけが、自分だけが、自分だけが
会いたいと、そう思っていたのだと。
思い知らされた。







一人の闇








「いいさ。
今は俺の手を取らなくとも、いずれ取らざるをえなくなる。」

そうして、どこにも行けないと知ればいい。
俺たちは同じなのだから。
そうでなければ、俺は_____

















「お別れだな。」
「ああ。でも、どうせまた会うことになるんだって?」
「・・・・・・さぁね。」
「はぁ?」

あんな自信満々に言っといて!とカガリはケイを見るが、そこにはどことなく沈んだ顔があった。
アレ以来、ケイのポーカーフェイスは少し崩れた。
ふとしたときに見せる表情で、落胆しているのがわかる。

(そんなにショックだったのか??)









「ケイ・・・・・・地球軍だったんだ・・・・・・」

パイロットルームで戦闘準備をしながら、キラは誰にともなく呟く。
トールたちも犠牲にした今、自分がケイと戦わない理由があるだろうか。
ひとつだけ、ひとつだけ決めた守る人。
絶対の誓い。
揺らぐ思いにはフタをして。
何も聞かない。
何も見ない。
ただ、彼の声だけを聞いて、彼の瞳だけを見ればいい。
他はいらない。
そう、決めた。
血にぬれた手。
さらに濡らすのは彼のためだけに。

「そろそろ出てくる頃だな。」
「それにしても修理するなんて味方としか思えないよな〜。」

イザークとディアッカの戦闘へ出るときの、意気揚々とした会話。

「地球軍のあのパイロットは本当にあなどれませんから。気をつけてください。」
「ああ。お前もな、ニコル。」

ニコルとアスランの何気ない会話。

「キラ・・・・・・?」
「・・・・・・」
「キラ?」
「っあっえ?何?」
「どうした。」
「なんでもないよ、アスラン。」
「キラ、あのパイロットと知り合いなんですか?」

様子のおかしいキラにニコルは問う。
それに、貼り付けた笑顔と、平坦な声で対応する。

「ううん。ただ、僕に突っかかってきた人だよ。まだ2回しか会ってない。」

嘘。
けれど、キラは自分のせいで皆がきまづい雰囲気を味わうのもいやだったし、地球軍と戦いにくくさせるのもいやだった。
地球軍にキラの知り合いがいると知れば、止めをさすときに躊躇が生まれ、それは逆に自分の命取りになりかねない。

「2回?」
「っていっても、ただぶつかっただけだから。」

嘘を重ねる。
守るためならいくらでも嘘を重ねよう。

『AA、探知しました!!』
『パイロットは戦闘配置についてください。』

サイレンと共に流れる言葉に、ケイの揺れた顔が頭にちらついたが、

「行こう」

キラは笑って、先に格納庫へと向かった。





















「なんか、一気に人少なくなったね。」
「民間人を下ろしたからな。」
「・・・・・・ミリィ・・・・・・」
「いいの。トールもフレイもここにいるのに、私だけ降りたくない。
トールが心配してるの、分かってる。お父さんたちにも言われた。
だけど・・・・・・そりゃ、成り行きだったけど、でも・・・・・・」

気を使うトールにミリィは迷いを振り払うように笑った。
その言葉尻を今度はカズイが聞きとどめる。

「そうだよね、成り行きだし・・・・・・」

食堂に集まっている彼らの中にフレイの姿はない。おそらくはまたケイのいるコクピットにでもいるのだろう。
最近___海に出てからフレイはケイのところにいることが多くなった。
嫌っていたのではないのか、と仲間が首を傾げる中、フレイは怒りながらもケイと談笑する場面が目撃されていた。

「・・・・・・キラは、あいつは今、どうしているんだろうな。」
「トール・・・・・・___うん。プラントに行っちゃったもんね。親戚のところ、だっけ?」
「確か知り合いのところじゃなかったかな。あいつ、大丈夫かな。」
「キラってぽやぽやしてるもんね。」

懐かしそうに話す二人の顔にはどこか複雑な表情が拭えない。
このまま戦況が悪化すれば、もしかしたらプラントに地球軍が攻め入ることにもなりかねない。そのとき、自分たちは___

『コンディションレッド発令!パイロットは戦闘配置についてください。』

「!!もう?!」
「オーブの外で待ち伏せしてたのか?!」

バタバタと食堂を去っていくミリィ、トール、サイ。
その背中を見送って、カズイはため息をつくと、のっそりとその後を追った。






「東に距離50!!敵機モビルスーツ射出されました!ガンダム6機です!!」
「なんですって?!」
「6?!」
「ケイくん、急いで!」
『もう準備はできてますよ。___ミリアリア。』
「了解。ディザイアガンダム射出準備!!」

すでに出ていたフラガがガンダム6機を相手にしようとするが、多勢に無勢の上、相手はザフトだ。
防げるわけがなかった。
そのうちの4機がフラガをすり抜けて、AAへ。

「バルカン砲発射準備!!」
「了解!!」
「P15砲で時間稼ぎして!」
「敵機距離20!!」
「ディザイアガンダム射出!!」
「だめです!1機防ぎきれません!!」
「敵機距離5!!!」

ドォン、と轟音が響く。
ぐらり、と船体が揺れた。
コクピットは緊張に包まれ、マリューはその顔を悔しそうに歪ませた。
ナタルは無表情だったが、その拳は固く握られていた。

「被弾確認!第3エンジン火災発生!ゲートG14〜H5閉鎖!」
「くっ立て直して!」
「バルカン砲発射準備終了!バリリアント砲も準備終了しました!!」
「ってーーーーーーー!!」

強力な砲の射出による反動が艦全体にかかる。
敵機のうちひとつに被弾したが、近づいてきた敵機はそのまま肉眼でわかるほどに迫ってきていた。
がん、と敵機が着艦し、その手にしたレーザー砲をコクピットへと合わせる。
ぎくり、と誰もが身体を強張らせた中、叫びが響いた。

「うわああぁあああっ死にたくないっ死にたくないよぅっっ!!」

聞き覚えのある声にミリィとサイが振り向く。
そこには転げるようにシートから立ち上がったカズイがいた。どこへ逃げようというのか、そのままコクピットを出ていく。

「カズイ!!」

サイは呼んだ瞬間、大きな音が響いた。コクピットの前にいたガンダムをケイが押しのけた音だった。
それに安心してサイは再び振り返ったが、カズイの背中はもうドアに阻まれて見えない。今、サイが席を外すわけにもいかなかった。



一方、コクピットを出たカズイは何もすることがない。もしも今更AAから出ても標的になるだけである。
カズイはうろうろと同じ所を行ったりきたりした。
焦点が合わずに、時折聞こえる爆音に耳を抑えた。
ぶつぶつと自分を落ち着かせるように呟く。

「そうだよ、どうして僕がこんなことしなきゃならないんだ。
折角平和に暮らしていたのに。
戦争なんて外で勝手にやっていればよかったんだ。
どうして僕を巻き込むんだ。僕は平和でいたかったのに。
ケイだってもともと軍人なんだから、勝手にやっていればいいじゃないか。僕は、僕は・・・・・・」

カズイは皆につられて、民間人と共に降りなかったことを後悔した。
友達が残ると言うのに、自分だけ降りたら卑怯者になってしまうことが怖かった。
トールたちから「友達甲斐のないやつだ」と白い目で見られるのが嫌だった。
けれど、ここはもっと嫌だと思った。
いつも死と隣り合わせで、いつも不安と緊張が胸を占める。










カズイがそうこう思い悩む間、コクピットのスクリーン上でついにケイがストライクガンダムを捕らえた。
ケイがキラを押さえる形で海へと落下しながら、ケイがビームサーベルを振り上げる。
それがストライクのコクピットに届くか届かないかくらいのところで、水しぶきが上がった。

「ケイ!!」

続いて、海の中で爆発した音。
他の敵機が気になりながらも、皆の視線はそこに注がれている。

「ケイ!応答願います!ケイ?!」

ミリアリアのその声がいやにコクピットに響いた。






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あとがき
やっとケイのガンダムの名前出てきた。というか、本当は名前出すつもりなかったんですけど、「強く願う」ガンダムは彼に似合うかもな〜と思って出しました。ストライクフリーダムのこといえなくなってしまったかもしれない、ネーミングセンス・・・・・・でも、あれよりはましな気が・・・・・・う〜ん・・・・・・
今回の題名はカズイとケイのためのもの。