何が本当?
何が嘘?

本当なんて望んでいないものの方が多いのに。
それでも知りたいというの?
優しい嘘に囲まれて生きていければ幸せだと思わない?






割れた闇







「だめだ・・・・・・ここからじゃ、重要な情報にアクセスできない。
倉庫に入っている艦の名前はわかるけど、全部オーブの船だし・・・・・・今メンテナンス中のとかはわかるんだけど・・・・・・これじゃあ、作業している艦をすべて見て回らないとだめかもしれない。」
「そうですか・・・・・・やっぱりそれでは地道に探すしか___」

ニコルとキラが嘆息した瞬間。

「___っっだったらお前はお父様の何を知っているっていうんだっっ!!」

廊下に響いた、声。
人通りが普段からあまりない廊下で、今は周りにいるのは自分たちしかいなかった。
キラはこの声に聞き覚えがあった。その人物が脳裏に浮かぶや否や、すぐにそちらへと駆け出す。
それに驚いたのはニコルだ。
だが、声をかけても止まらないキラに、わけのわからないままに、ニコルも続くしかない。
灰色の廊下を足音を立てないように、けれど早めに走る。
真っ直ぐな廊下だが、叫んだ相手が見えないのはきっと曲がり角にいるから。
あれから叫びは少しずつ聞こえて、誰かと話しているのだとわかる。

「・・・・くなくとも、汚い部分なら・・・・・・ってるさ。」
「何ぃ?!」
「・・・・・・いな。そん・・・・ばない・・・・・・る?」

ここだ、とキラは曲がり角の前で壁に張り付く。
ニコルも同様に倣えば、次の瞬間、キラを曲がり角の向こう側の手が捕らえた。

「?!」
「・・・・・・予想外だけど、会えて嬉しいよ。」

慌ててニコルが飛び出そうとするが、そこはぐっと押さえてとびだすのを堪える。
今自分が焦って出ても、不利になるだけだ。ここはタイミングを見て助けるべきである。
紅い服を着ている意味くらい、ニコルにもわかっていた。
しかし、その決意もまた、すぐに破られる。

「そこにいるお仲間は大層邪魔だけどね。」

角から手が出てきたと思ったら、あっという間に眉間に銃をあてられた。
コーディネーターの中でも優秀な自分があっという間に捕らえられる___その事実にニコルはそれこそ背筋が凍るような思いだ。
キラは腕をひねられて、足で壁に押し付けられていた。
コーディネーター二人をまるで赤子の手を捻るように扱う・・・・・・その能力がナチュラルと言えるのか・・・・・・

「・・・・・・お前、本当にナチュラルか?」
「・・・・・・君たちのいういわゆる天才ってやつだろ。あと経験が確実に違うんだよ。」
「何?」

カガリもこれには眉をひそめる。どう見てもケイは同い年にしか見えない。
経験が違うといっても___それほど違うということは特殊な訓練を受けたということだ。

「悪いけど、キラにだけ用があるんだ。君は帰ってもらおうか?」

にっこりと、銃口を向けた相手に大層愛想がいいことだ。
けれど、その笑わない瞳から本気はわかったはずなのに、ニコルはき、とケイを睨み、その場を動こうとはしない。
ぎり、と引き金に力が篭もる。
焦ったのはキラだった。

「ニコル!!先に帰って!!
大丈夫だからっっ知ってる人だからっ!!」
「キラ!そんなっ知ってる人だったらなんで拘束する必要があるんですか!!」
「それは・・・・・・っ」
「なんとなく。暴れないってなら、キラを離すけど。そしたら、君が今度は俺を攻撃するだろ??」
「・・・・・・」

この場は圧倒的にケイが有利だ。
数では同じ。
だが、ナチュラル二人にコーディネーター二人ではその能力が全く違うというのに____
それをねじ伏せるケイは一体なんなのか。
カガリも薄ら寒いものを感じて仕方ない。
天才という。確かにそうなのかもしれない。
けれど、コーディネーターというものが存在するこの世界で、その言葉はひどく曖昧なものとなりつつあった。
ナチュラルの天才とコーディネーターは確かに同じものなのかもしれない。
その境界線は曖昧なのだ。そもそもコーディネーターというものがナチュラルの天才を目指したものであるから。

「・・・・・・ニコル。」
「・・・・・・キラを残して・・・・・・行けません。」
「・・・・・・分かった。君のその頑固さに敬意を表して。」

そう言うと、ケイはゴキという音を発して、キラの腕の間接を外すと次の瞬間、そちらに気をとられたニコルの不意をついて鳩尾に強烈な一発をお見舞いした。
どさり、と崩れるニコルの体を見下ろすケイに今度はキラが襲い掛かる。
腕の痛みは相当なものだろうに、もう片方の手でケイを倒すつもりらしい。

「君に足りないもの。
腕ひとつ、経験値。それと____覚悟、かな。」

ケイはそう呟くと、キラのけりをいなして、するりと流れるような動きでキラの間合いに入って腹を蹴った。その動きは東洋の舞に似ていた。
急所を狙わないケイに、僅かに体を捻って急所を外したキラ。
そうダメージは大きくない。
腕を押さえながら立ち上がるキラに、ケイはすまなそうに肩をすくめた。少々の苦い顔は、自嘲ともとれる。
少し非難するようなキラに、ケイはいつもより声を落として言った。

「だってさ、君が聞いてくれないから。」
「暴力をふるって聞くなんて拷問と同じじゃないですか。」
「君の仲間が納得してくれなかったから。」
「それはそうですよ。普通に話しかけてくれれば良かったのに、あんなふうに押さえつけられれば、敵だと思います。」
「悪かったね。いつもなら君の気配は分かるんだけど、今回はちょっとね。」

感情が少し高ぶっていたようだ。
いつもならありえないミス。
とっさに人の気配に反応して、押さえつけてしまった。
会えたことはよかったが、彼に仲間がいたせいで厄介なことになってしまった。
仲間がいると気配で察していれば、もっと穏便なやり方もあっただろうに。
思わず舌打ちをするケイに、カガリは不思議そうな顔を向ける。
カガリにしてみれば、こういう強引なやり方をケイが気にするとは思えなかったからだ。
どうにも、キラと他のものとの扱いに差を見出してしまうのは仕方の無いことだった。

「悪い。」

ケイは再び謝罪の言葉を口にのせると、キラの間接を元へと戻した。
キラの口から微かな呻きが洩れたが、廊下に響く前に霧散する。
気を失ったニコルの身体をケイが担ぎ、キラを近くの部屋へと誘導する。部屋のIDを知らないはずなのに、勝手に開いた部屋をカガリは驚いた目で見つめていた。

(・・・・・・ハッキング?オーブの軍内を??)

オーブの高技術を誇りとするカガリには信じられない光景だ。しかもかなり手早く開けてしまった。

「あの話、考えてくれた?あ、あんたも。」

つけたしのようにカガリも聞くケイ。
それに少しむ、としながらもカガリが口を開く。

「全然だ。あんなこと不可能だ。私とは考えが違う。同意などできない。
国ができないことを個人ができるものか。
それだったら、国は何のためにあるのだ?個人でできないことを代わりにするのが国であるはずだ。」
「またそれか?その答えは前も言っただろう。」
「それでも、人はそうやって生きてきた。今までも、これからもそうだ。」
「・・・・・・やれやれ。
確かに国は個人が一人ではできないことを可能にする、代弁のものだ。代表者がまさにそれなんだからな。国ができないことを個人がやるなんて無理かと思われるかもしれない。
だが、国ができないことを今まで個人単位でやってきた者がいるだろう?
偉人と呼ばれるものたちは皆、そういうものなはずだ。
歴史上、国が混乱したとき、そういう個人が生まれてきたのもまた事実だろうが。」
「私は反対だ。私はまだ、国というものを信じている。
それに、個人が、それもお前くらいの力を持ったものが好き勝手に行動してしまえば、さらに戦火が広がるだけだ!!」
「信用無いな。」
「当たり前だ!!」

今までのケイのカガリに対する言動では確かに信用させることは難しいだろう。
なにせ、今のカガリのケイに対する認識は推測不可能な思考、能力をもついやな奴となっているのだから。
ケイはさも驚いたかのように目を丸くして、言った。

「ん〜?誠実に接したつもりだけど?」

その大げさなリアクションが逆にカガリの言ったことを確定させている。
ケイもそのことがわかっているのだろう、口元が上がっていた。
カガリはそれに眉を思いっきりひそめると、今度は困惑するキラをちらりと見て、言う。

「それに、どうしてこいつとなんだ?コーディネーターを差別しないのはいいことだが、納得はできない。
お前は地球軍・・・・・・軍人なんだろうが。そしてこいつも軍人だ。」
「・・・・・・今は、言えない。
けれど、この3人だからこそ、しなくてはならないことがある。」
「何?」

どういうことだ?とカガリはケイに詰め寄ろうとするが、ケイはその前に再び気になることを呟いた。

「君がいやならいいさ。どのみち、俺とまた関わることになるだろうしね。」
「?」

時折予言めいたことを言うケイだが、今回はいやに口調がきっぱりとしていた。
それでいて、少し自嘲したような口調が微かにカガリの中で残った。
ケイは顔をキラに向けて、目で問う。
その真っ直ぐな漆黒の瞳に、キラは少し罪悪感を感じながらもしっかりと言った。

「___僕は決めたことが、あるんだ。」

こちらを見る漆黒の瞳がわずかに揺れた気がした。
まだ3回。
それしか会っていないのに、何故か相手に入り込んでいる自分に気づく。
けれど、キラとて譲れないことはある。
キラは心を鬼にして言った。


「守りたい人が、いるんだ」




がしゃん、と
嘘で固めた仮面が割れた気がした
真実を目の前につきつけたいとそう思った







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05.7.7
あとがき
そういえば今日は七夕・・・・・・でも何もしてません。
とりあえず空を眺めてみるか。
闇の暁をもっと早くかけますように、とか。笑。