紡がれる意志    #2沈みゆく悪夢






『もう解放してやれよ、自分を。』

『一生そうやって背負っていくつもりか?』

『仕方なかった。お前は充分良くやったじゃないか。何故そこまで思いつめる?』

だって_____その通りじゃないか。

一生償っても足りない。

この思いは手放したくない。









「キラ、大丈夫なのか?」

カガリはできるだけさりげなく尋ねて、デザートスプーンを置いてからちらりと夜景を見た。夜景は美しかったが、それよりもそのガラスに映るアスランの表情に視線をとられた。

「・・・・・・俺から見れば、全然だめだ。あんなの・・・・」

アスランは表情を険しくして手元を見詰めた。手を固く組んで微動だにしない。

「・・・・フレイ・アルスターだっけ。あの子の名前・・・・」

「・・・・らしいな。」

「知っているのか?」

「名前だけだ。それ以上は聞けなかった。」

「知りたいか?」

カガリは覗き込むようにアスランを見た。アスランは手元を相変わらず見たまま、組んだ手は力を込めているのか震えている。

「・・・・・・・・本当はあいつが話せるまで待とうと思っていた。だが・・・一向に回復に向かわないとなると・・・・・・俺も知っといたほうがいいのかもしれない。いや、知りたいんだ。キラがどうしてあんなに・・・・・」

ぎゅっと力を込めた手は白くなっている。カガリはそれに手を重ねて、

「お前までそんな煮詰めていたら、だめだ。キラが苦しいんだから尚更、お前はしっかりしてろ。お前がキラを支えてやるんだろう?」

「・・・・そう・・・・そうだな・・・・・」

少し力が抜けた。それでも表情の方は硬いままで。

「・・・・・出ようか、アスラン。長く・・・・なるかもしれないから。」











“戻らない時を思って

もしももしももしも・・・・・

戻らない君を思って

あのときもしもあのとき・・・・・

果てしない宇宙のようにENDLESS

どうしようもない思いをENDLESS

君に捧げる歌に・・・・END・・・・LESS“







どこからか流れる歌。それは最近よくTVに出てくるもので。

「変な歌・・・・・嫌な・・・・歌・・・」

ENDLESS・・・・・終わりなき・・・・・・・歌

果てしない、絶え間ない、もう、後悔とも違う。未練?執着?反省?それともそれとも・・・・自虐?これはどう表せばいい?すでに終わったこと。終わるべき思い。終わったと思っている。自分では。終わってしまったもの。終わらせてしまったもの。

終わりは始まりだなんて誰がいったのだろう。

どこからが始まりで、どこからが終わりで・・・・何が終わって何が始まったのか・・・

終わったのは焦燥で、始まったのは哀切?終わったのは戦争で、始まったのは平和?

どこからが終戦でどこからが平和への始まり?始まりと終わりは同時なの?

自分はどこで始まってどこで終わる?

この思いはいつから始まってどこへいく?

どこから終わっていつ始まった?

認識している。これはもう要らない、持っていてはいけない思い。それはわかる。捨てたはずだった。それでも持ってしまうのは感情が許さないから。

持てと。

持って一生で償えと・・・・・

何を?何を?彼女を死なせてしまったこと?それとも・・・・戦争に彼女を巻き込んだこと?彼女に関わったこと?おそらくはすべてで、でも、違うもの。

彼女は死んだ。

それは事実。誰にも変えられないもの。変えてはいけないもの。

では、僕は償っている。

それは・・・・・わからない。でも、もしそうならば・・・・してはいけないこと?







一年。

落ち着けば落ち着くほどに思い出されて仕方ない。

あのときの声と音と映像と何もかもが洪水となって、僕の中を占める。

あの身を裂くような思い。苦しくて苦しくて悔しくて悔しくて何もかもが・・・・・真っ白に・・・砕け散った。











“地面に耳を当ててみて、鼓動を打つのがわかるかい

君は笑って頷いた そうして君は還ったの?

僕は胸に手を当てて、地面と音を合わせていた

こうして君に届くかな この音は届くかい“





「届くはずがないじゃないか・・・・だから、余計に償おうと・・・・思ってしまうんだよ・・・・・」

届かないから。

許してくれる人はいないから。

だから終わりはない罪。罰。



手を左耳の真っ赤なピアスに

まるで血の様なその色は何を象徴しているだろう

罪か償いか





キラは眼を瞑って祈るように夜空を仰いだ。











「といっても・・・・私が知っているのは少しだ。後から・・・実は私も気になってミリアリアというキラの友人から聞いたんだな。あとサイというやつにも。二人とも口は重かったから本当のことをいったのだと思う。でも、すべてをいってくれたわけじゃないと思う。・・・・特にああいう不安定な精神状態のときには他人に言いたくないことをやってしまうものだから・・・・・」

「・・・・・そうだな・・・・・」

ゆっくりと前を歩いていたカガリが振り返る。こっちだぞと並木道を指して微笑んだ。

それからカガリが語ったことはアスランの渋面をさらに凄まじくしたが、事実とそう変わりなかった。

「・・・ちょっと複雑だけど、簡潔にいうと、サイ・アーガイルとフレイ・アルスターは婚約者で友達以上恋人未満程度の付き合いだったらしい。でも、見たところ、両思いだったんだ。



だけど、あの戦争でフレイの父親が死んで、フレイはそのとき戦いに出ていたキラを・・・・・・なんていうかな・・『自分がコーディネーターだからって本気で戦ってないんじゃない』といって憎んだそうだ。キラはコーディネーターだと知っていたし、相手もコーディネーターなのは明白な事実だったからな。

それに、彼女は母親を亡くして、父親と一緒に過ごしていたから愛情も厚かったんだろう。



しばらくサイっていうやつが慰めていたらしいんだが・・・・・

そのうちに彼女はキラを利用することを思いついた。キラが民間人を守りきれなくて泣いていたところをみたからだ。

ぼろぼろだったらしい。そのときのキラは。

誰かに縋らないとやっていけないくらいに・・・・・



だから、差し伸べられた彼女の手をとってしまった。そうして、キラは彼女を守るために敵を殲滅しようと考え出した。それがさらにあいつを苦しい立場にしていったが・・・・

そして、フレイとキラはなんとなく恋人みたいな関係になって、だからサイ・アーガイル、彼はフレイに確かめようとしたらしい。それで拒否されて・・・・彼は諦めたって。彼女を。

そうしているうちになんかオーブで親に会えるってときにフレイとキラがもめたらしいんだ。その原因はよくわからないけど、そのときからフレイもキラもどこか思いつめたようになって・・・・

そうして、結局そのままキラはお前と戦って死んだことになった。生きているとわかってからもフレイとキラは出会えなかった。

そして・・・・・彼女は死んだ。あの戦場で・・・・・キラの目の前で・・・」









息がつまりそう。

もう、いいんだ

僕を心配せずとも_____



逃れたい

心配させたくない

僕で傷つかせたくない









誰か・・・・・僕を壊して・・・・・・

















“何もかもが早かった 何もかもが遅かった

それなのに僕らはENDLESS

わかっていたのにENDLESS“











「変な歌・・・・・・・」

終わりなき・・・・終わりなき・・・・・何もない・・・終わってもいない。始まってさえ、いなかった思いなのに・・・・・・どうして捨てきれただろう。

「フレイ、フレイ・・・・僕は君を・・・・・・」

救クエナカッタ・・・・・

その叫びを確かにこの耳に聞いたのに。その涙を確かにこの眼で見たのに。その苦しみを確かにこの心で感じたのに。

どうしてこんなに無力なのか





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あとがき
変な歌詞ですみません。そういう才能ゼロなんで。
キラの暗暗独白。