叫ぶ闇
「今のはサイくんか。大きくなったな・・・・・」
そう呟く声が聞こえて、ミリアリアは二人が婚約者だったことを思い出した。
サイがフレイを呼びに行く合間に、フラガが通信の前に出た。
「議員どの。少し少佐とお変わり願いたい。」
議員がにこ、と笑ってまた画面が揺らぐと、ぱっと先ほどの軍人がスクリーンに現れた。
「ロバーソン少佐。
ムウ・ラ・フラガ大尉です。お久しぶりです。」
「やぁ、君か。君の噂はこっちまで届いているよ。」
「どうもありがとうございます。sir
ところで、差し出がましいようですが、護衛に回ってくださるのは嬉しいのですが、民間人を乗せて___とはいかがなものでしょう。」
「はっはっは!大丈夫だ。
この艦はそうそう沈まんよ。たとえそのモビルスーツといえどもな!」
「いえ、しかし、万が一ということも・・・・・・」
「心配するな、君たちが無事地球に着陸するまではもってみせる。君たちが地球にいけば、彼らももう戦おうとしないだろう。」
「はぁ・・・・・・」
そうこうしているうちにフレイが着き、議員と変わってしまった。
ケイは嬉しそうに会話する二人を見て、微かに舌打ちした。
そうして、コクピットに背を向けると、格納庫へと向かった。
(甘い。・・・・・・あの艦は沈む。
モビルスーツに持っているのは訓練されて選ばれたコーディネーターの軍人だ。
それにあれしきの情報でガンダムの性能を分かったつもりなら、馬鹿としかいいようがない。
おそらく・・・・・・あの艦を沈めて、アルスター議員を殺すつもりだ・・・・・・
あの少佐は捨て駒ということか。まぁ、確かに有能そうには見えないが。)
「ならば、俺はどう動く?」
ケイは顔を険しくして、パイロットスーツに手を通した。
その瞬間、サイレンが鳴った。
「艦内戦闘配備!!
全員非常事態に備えてください!!」
「来たか____っっ」
*********
「何?あの赤いのを破壊すればいいわけ?」
赤い機体に乗るのはルナマリア・ホーク。
機体と同じくその容貌は赤い髪で強烈な印象を与える。少しきつめの瞳がその気性の強さを表していた。
「ガンダムを奪還または破壊だろ?あの赤いのはどうでもいいんじゃん?」
パーツ型のインパルスに乗るのはシン・アスカ。
黒髪に赤瞳の組み合わせがなんとも印象的である。口調には少年特有の自信があった。
「AAは破壊だ。」
白い機体に乗るのはレイ・ザ・バレル・
少し内にカールした金髪が特徴的で、冷静な表情からその性格が窺えた。
「なんか出てきた。
あれが盗まれたガンダムね。」
「あれ?もうひとつ、モビルアーマーがあるけど?」
「隊長はガンダム以外はすべて破壊せよ。
ガンダムも奪還不可能ならば、破壊____だったな。」
3つの機体はAAと地球軍艦へ向かって突っ込んでいった。
(今、地球軍にAAが渡れば、オーブは地球軍よりになることは必至だ。
それは・・・・・・避けなければ・・・・・・この軍事力を地球に渡すわけにはいかない!!)
「おいっ坊主っ聞こえてるか?!」
「っえ?はい?」
「だから、軍艦が護衛してくれるっていうから、俺今回は攻撃に回るぞって。」
「誤って撃たないように、ですか?」
「撃たれるかよ。ったく。」
とぼけたケイの物言いに、フラガは苦笑してモビルアーマー「メビウス・ゼロ」を操る。
そこへ、3機が突っ込んできた。
ケイは脇に装着してあったガンで応戦する。
フラガは4つの子機を操って応戦していた。動きの速いそれらを上手く操って、3機の行く先を阻む。
地球軍でもモビルアーマーをこうも巧みに操れる者はそうそういないだろう。
「モビルアーマーはこちらにひきつけておく。」
レイはフラガの方へと加速をつけた。
その通信を受けて、シンはこちらに向かってくる機体を発見した。
「分かった。じゃあ、俺はあのガンダムかな。」
「いや、あれは私が相手をする。シンとルナマリアは護衛艦とAAを沈めろ。」
突如入ってきた通信に三人が目を丸くする。
確かに隊長もくると聞いていたが、こんなに早く出てくるとは思ってなかったのだ。
「隊長も出てきたんですか__っと了解!」
「じゃ、行くわよ、シン。」
二つの光線が軍艦へと向かっていき、それを阻もうとしたケイにギュレットは斬りかかった。
「ちっ」
やむを得ず、二つの機体を通してしまい、ケイは舌打ちをした。
*********
「二体来ます!」
「砲弾を浴びせてやれ。
左舷30°!P342の発射口を開け!」
「ザフトはあちらに任せて、はやく降下地点を地球軍本部に合わせて。」
マリューが号令を出す。
AAは大きなその機体を地球に向けて発進させた。
それを見たギュレットは焦って部下に指示を出す。
中々ガンダムとの決着がつかないのは予想外だったらしい。
「シン!ルナマリア!AAを地球に降下させるな!
シンはフォースだな?だったらアレを使え!」
「はいっ」
ガシャン、とシンはフォースインパルス特有のX104砲弾を構えた。ルナマリアが地球軍艦に砲弾を浴びせ、注意をそらしている間に、シンはその後ろのAAに狙いを定める。
ドン、とインパルスに反動がかかり、砲弾の光線はまっすぐとAAの後ろを捉えた。あちらも少しは回避したらしく、致命的ではないにしろ、受けた損害は小さくないだろう。
「E19損傷!E5〜E21まで火災発生!シャッターE0〜7まで封鎖!」
「左尾翼2損傷!」
「動力炉は?!」
「大丈夫です!」
フラガはAAと地球軍艦を見て、眉をひそめた。レイは上手く4つの子機を避けながら、攻撃をしてくるので、どうにもあちらに手がまわせない。
「そのまま、シンはAAをルナマリアは軍艦を!
グラディス!地球軍艦を落とせ!」
ギュレットも頭は少々回らなくとも、隊長という地位まで上りつめたのにはそれなりの腕があるからだ。
ケイは中々しつこいギュレットに苛ついていたが、AAが損害を受け、地球軍艦が苦戦しているのにはあまり気にしていない。
そちらの方が好都合だからだ。
AAが沈むのは良くないが、地球軍艦が沈み、AAが降下地点をずらされるなら都合がよい。
「けど、いい加減_____しつっこいんだよっ」
加速をつけて切りつける。
だが、それをギュレットはからくも避けた。
ちっと舌打ちして、ケイはZ58砲を取り出した。
そうして、遠ざかりながら、それに合わせて近づいてくるギュレットに標準をあわせると、撃った。
それをギュレットはX5磁シードを使ってかろうじて防ぐ。
だが、ケイは同じところに寸分違わず連射した。これほどの射撃はそうとうの手練れでも難しいだろう。
ギュレットのシールドは破られ、その赤い光線は機体を貫いた。
ちょうど同じ頃、タリア・グラディスは地球軍艦と交戦していた。
だが、こちらにはルナマリアという機動性のよい機体がある。
ルナマリアはその機動性で地球軍艦の目を撹乱し、その間にタリアが砲撃を与える。いまや、軍艦のあちこちに煙が上がっている。
シンはAAの損傷具合を確認すると、X104砲弾を地球軍艦に向けて発射した。シンとしては撹乱させるために撃ったのだが、偶然ルナマリアの攻撃から回避していた船体に直撃してしまった。
地球軍艦もこれにはたまらずに爆発し、宇宙の藻屑へと化してしまう。
「あ・・・・・・」
「シン!やるじゃない!」
「あ、うん、まぁ・・・・・・」
「!ガンダム」
レーダーに映った姿を見て、ルナマリアはそちらへと機体を向けた。
シンは地球の重力にひっぱられているAAを目で確認し、急いで追おうとした。任務は撃破だからだ。
だが、そこへ帰艦命令が出された。
「AAは大気圏内に突入したわ。貴方達は深追いせずに戻りなさい。」
「隊長は?」
「・・・・・・」
そこで、隊長機がないことに気付き、三人は目を見開いた。
********
「いやぁああああああっっ」
「フレイっ」
スクリーンいっぱいに地球軍艦の欠片が漂っている。
フレイと同様に呆然とそれを見詰めていたミリアリアは大気圏内突入のサイレンにはっとして、通信を入れた。
「フラガ大尉戻ってください!ケイ!戻って!」
「大丈夫。俺もう格納庫に入るから。坊主は?」
「ケイ?!」
「ここからじゃ、格納庫には戻れない。」
AAが大きく揺れ、大気圏突入を告げた。
「ケイくんは?!」
「今、着艦しました!」
緊迫した空気の中、そこに悲鳴が響く。
「ああぁああああいやぁあっパパァっっ」
マリューが振り返ると、フレイの肩を抱いているサイが頷いた。
そっと肩を押して、フレイをコクピットから出るように促し、サイもそれに寄り添って出て行った。
「フレイ・・・・・・」
「ケイ、ケイは?!あの人が守ってくれるんじゃ、なかったの?!戦ってるんでしょう?!
どうしてっどうしてっパパがっっ」
サイが慰めるが、その耳には何も入っていないように思えた。
ただ、虚空を見詰め、先ほど見た映像を繰り返し脳裏で見ているようだ。
大きく見開いた目から、涙が零れ、宙に漂った。
「どうしてっっパパぁあっ_____っ」
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04.12.18
あとがき
レイとルナマリアが乗ってる機体名よくわからなくので、白いのとか赤いので・・・・・・(笑)
もう、戦いの仕方とかよくわからないので、適当、適当。あまり突っ込まないでくれると嬉しいのですが。いいのか、こんなんで、自分(泣)
題名はフレイの・・・・・・いわずもがな・・・・・
てか、題名が予告と違ってすみません・・・・・・今度こそ・・・・・