「お前はどうして俺にかまう。」
365日言い続けた言葉。
少年は返事を言いかねて、いつも困ったように笑う。
それはひとつの可能性
「そうか。もう一年経ったか。あの日から。」
金髪を風に委ね、笑う青年が言う。
それに黒髪の赤ん坊が遠くを見た。
ボンゴレがかつてないほど揺れたとき。
10代目を巡って内争が行われ、巻き込まれた9代目はなんとか一命をとりとめた。
しかし当然、復帰した9代目は以前ほどの精力はなく、早々にでも10代目に継がせたい雰囲気が組織の中に漂い始めた。
そんなとき、9代目から手紙がきた。
『正式なる後継者綱吉君へ
私は衰えてしまった。周知のことかもしれないが、皆10代目を期待している。
しかし、私は君がそれを望まないことも知っている。
よって、私は君が中学を卒業するまで、頑張ることにしよう。
但し、中学を卒業したらイタリアの高校へ来なさい。』
中学まで。
以前はいつまで待つつもりだったのか、知らない。
しかし、口調ぶりからすると、その期間は随分と、もしかしたら大学卒業まで待っていてくれたのかもしれない。
「ああ。そして、あと一年もない。」
「・・・・・・あいつはどうするんだ?」
「さぁな・・・・・・」
「そのとき、ツナはどうするかな。」
「・・・・・・さぁな」
二人の思い浮かべる人物は同じ。
茶色の髪の毛。
茶色の瞳。
平凡な顔つきで。
運動音痴、勉強もできない。
いわゆる『落ちこぼれ』。
ただ人と違うことはその血。
それでも彼は平凡に恋を知り、平凡に胸を高鳴らせ、平凡に彼女を守った。
平凡に仲間を思い、友達を思い、その平凡さ故に戦った。
「あの、」
「なんだ」
ギロ、と睨めばすくむ瞳。
ならばどうして自分にかまうのだ。
苛立ちを抱えて一年。その短くない年月。
「・・・・・・暑くない?」
それは黒尽くめで長袖の彼を指した言葉。
もう季節は6月。湿り気を帯びて蒸し暑い季節だ。
「別に。」
「そう。」
ごろんとベッドに寝て、天井を見上げる。
低く、狭い部屋だ。
ここで赤ん坊一人、中坊一人、大人一人、おまけにペットのカメレオンや知り合いのチビらが暮らす。
あまりにも狭い。
「おい」
「はい?」
「一年だぞ。」
「・・・・・・それぐらいか。」
ぼーっと窓の外を眺めて言う少年は何を考えているのか。
一年考え続けたが、彼にはわからなかった。
「わからん」
「・・・・・・」
「てめぇは本当に何考えてんのか、わからん」
「うん・・・・・・」
「お前はどうして俺にかまう?」
「本日三度目。」
そう笑って少年が振り返った瞬間、外から声が聞こえた。
聞き覚えがある。
「十代目ぇ!!」
「ご、獄寺くん・・・・・・どうしたの?」
「いえっ十代目がっそのっ課題に困っていらっしゃるとか聞いてっ!!」
「ツナ〜」
「山本?」
「一緒に課題やろうぜ。」
彼らに一年前の幼さはもはやない。
戦いを超えることによって得た精悍さがある。
「課題?出てたっけ?」
「これだろう。」
ツナが首を傾げていると、机に散らばる教科書の下敷きになっていたプリントを彼が差し出した。
納得した声をあげて、感謝の意を言葉にすると、彼はいつもどおりに鼻で笑う。
あがってきて、と窓の外に言い放ってから、ツナは彼をまた振り返った。
「あのさ、おれも一年ずっと考えてた。」
「何を?」
「貴方と同じこと。」
「?」
「『お前はどうして俺にかまう』」
いまいち意味がわからなくて、眉根を寄せた。すると、いつからだったか、癖になるよ、とツナがそれを伸ばそうと手を伸ばした。
触れる箇所が、あたたかい。
一年の内、何度も振り払った手。
何故だか、今日だけは、振り払えない。
「一年考えたけど、わからなかった。
最初は同情なのか、怒りなのか、憎しみなのか、どれなんだろうって思った。
貴方をここへ連れてきて看病した日、散々仲間にね、何してるんだって怒られたんだ。
リボーンにすら呆れられた。
おれも、自分に呆れた。」
「自分に?」
「理由がわからずにしてたから。やっぱりおれは馬鹿だと思った。」
「理由・・・・・・」
足音が近づいてきた。
いつもの足音だ。
あれがドアを隔てずに聞こえれば、もう、ツナは話をやめてしまうだろう。一年経って、やっと話し出した言葉をまた飲み込んでしまうだろう。
あと一年待つほど彼は気長ではなかった。
「え?」
ツナを片手に掴み、窓の外に躍り出る。
ちらりと横目で見た家庭教師の黒い瞳には何の感情も垣間見れなかった。
「じゅうだいめぇ!!おはようございます!!・・・・・・ってあれ?」
事情を知った獄寺の叫びまであと数分。
「何?!」
「あいつらが来れば、てめぇは話をやめてただろうが。
そんなの、もう面倒だ。
またあと一年も待つ気はねぇ。」
「・・・・・・そんな、ことは・・・・・・」
「ねぇとはいいきれないだろうが。」
近くの公園にすとん、とその小さな体を下ろした。
さして抵抗もなくその体は公園のベンチに腰を下ろし、さらには隣に座ることまで強制した。
なんとなく据わった瞳が少々怖い。
「・・・・・・わからないんだよ。
おれにだって。」
「・・・・・・」
「以上。」
「は?」
何か文句あるかとばかりにこちらを見つめるその茶色の瞳と目があう。
もちろん、文句なら山ほどある。
一年。
決して短いとはいえないこの期間。
自分はありとあらゆる言葉で相手の心理を想像しては頭を悩ました。
その答えが。
わからないとは。
「だから、もう、やめた。」
「やめた?」
嫌な、予感がした。ざわざわと胸うちが騒ぎ出す。
一年前は他人のたった一言に惑わされることなどありえなかったのに。
透き通るほどに素直な瞳で、こちらを向くツナ。
「だから、やめなよ。」
何を?
ふと、どうしてだか、道端に捨てられた犬を思い出した。
ふと、どうしてだか、朽ち果てた首輪を想像した。
彼はそれで自分のことがわからない男ではない。そして、とっくの昔にそれを気づいていたことも認めるしかないと思った。
今更、離れられないのだと。
「考えるの、やめちゃえばいいよ。」
「何?」
「何って?」
きょとんとして見返すツナに、彼は自分が勘違いしたことを知る。
そうして、安堵する自分にもはや完全なる敗北を知ったのだ。
07.01.06
・・・・・・リハビリ中。文章が・・・・・・(;_;)
とりあえずザンツナ。
何が書きたかったのか自分でも不明。そして書いているうちにザンザスが何故日本語できるのか微妙につっこんでしまった。本編も・・・・・・いくらヴァリアーが有能でも日本語話せるってわけじゃないだろうに。。笑。ついつっこんでしまった。。。