イタリアと日本の夕日は随分違うと思う。
それは自分が変わったせいなのかもしれないけれど
染まるのは・・・
イタリアの綺麗な町並みを照らす夕日に町は紅く染まって、まるでこれから舞踏会に行く娘のように化粧をしたみたいだ。
日本の夕日はいつもいつも町の中から、何かの建物に遮られて欠けた太陽をよく見かけた。
美しいイタリアの町。
けれども、故郷はやはり別格なのか、今はひどくあの欠けた太陽が恋しい。
音もなく、手は懐に。
次の瞬間に相手の眉間に当てる。
当てるのは鈍く光る黒い危険物。
夕日に当たっても少しも赤くなることはなく。
この物体が赤くなるのは命を吸ったときだけなのか。
相手は自分よりも先に自分の頭に焦点を当てていて。
ひやりとした汗が背中に伝う感触はいつもと同じ。
黒の先には誰よりも深い黒を纏う殺し屋。
漆黒の瞳がわずかに笑って。
「気配を消して入ってこないでよ。心臓に悪い。」
「どこの世界に気配を消さない殺し屋がいるんだ。」
「いるじゃん。」
「・・・・・・あんなのと比べるんじゃねぇよ。」
苦い顔をした相手をライバルとする年下の殺し屋を思い浮かべて、俺は笑う。
あの涙でぐしゃぐしゃになった顔しか覚えていない彼は今、どうしているだろう。
この立場になってから、あまり会わない。会えない。
「・・・・・・リボーンだけは、夕日の赤にも染まらないね。」
「は?」
何もかもが赤に染まる中
彼だけが変わらずに黒く。黒く。
それにどこか安心して。
それにどこか不安を感じて。
ああ、情緒不安定なんだ、きっと。
それはいつものことだけれど。
いつもより少しばかり赤い夕日にきっと影響されただけで。
「明日、ボローネの野郎が来る。」
「・・・・・・うん。」
綱渡りをするような生き方の中。
何にも染まらない黒。
それどころかすべての色を含んで。
「どうした?」
「うん・・・・・・随分遠くまで来たなって。」
「・・・・・・明日までにその面直しとけよ。」
その言葉に笑う。
きっと今、自分はひどく頼りない顔をしているのだろう。
泣きそうな、そんな表情だ。きっと。
焦がれて、焦がれて、でもそちらに行けなくて。
誰も置いていきたくなくて。でも帰りたくて。
でも帰っても仕方なく、帰る場所はここであると決めたはずなのに。
無性に帰りたくなるときがある。
そういえば、お前は怒るのか、呆れるのか、リボーン。
どっちでもいいよ。
悲しみさえしてくれなければ。
ねぇ、リボーン。
「彼らには弱みなんて見せてやらないよ。」
「言うようになったじゃねぇか。」
夕日を眩しそうに見る彼に普段と違う表情を見て。
あれ?と思ったのは確かで。
ふと手首を握られて、引き寄せられる。
強い力によろければ、少しだけ俺より低いあいつの頭が肩に乗り。
きっと夕焼けは誰もが感傷的になるのだと思う。
リボーンもそれは例外でなく。
そのことに安心する自分。
「ねぇ、リボーン。
イタリアでは一人ひとりに神様が宿っていると信じられているって聞いた。
ならさ、俺たちは一体どれだけの神様を殺してきたんだろうね?」
「神は血を流さない。俺たちの手が赤く染まるのは人間を殺しているからだ。神じゃねぇ。」
「何それ。」
「俺たちも、相手も人間だ。神になんか逃げるな。」
「ロマンがないなぁ。イタリア人のくせに。」
夕日をこうやってみること自体、日本にいたときよりずっとロマンがあるのだろうけれど。
「ロマンが欲しいならシャマルに処方箋でももらいに行け。」
「やだよ。これの処方箋はリボーンからしかもらえない。」
「ちっ妙なこと覚えやがって。」
本当に忌々しげにいった彼に笑って。
笑ったら、軽く首をかじられた。
痛いよ、とおしやろうとすれば、くしゃりとなる黒髪。
ふと見れば、赤い光はやはり彼の髪に埋もれるだけで漆黒の髪は染まりはしなかった。
彼は染まらない。
染まったのはきっと夕日の方。
赤は黒に染まって、僕らの世界になる。
05.10.18
あとがき
突発にもほどがある。本当自己満足物になってしまった。。。