「オレなんか攫っても、リボーンに会えないよ。」
隣で運転している男にそう話し掛けた。
男は見たことのないくらいの闇の色を有している。
漆黒の瞳、髪、そしてスーツまでもが夜の闇に融けるような色だった。
「それは僕が決めることだ。君は大人しく座ってればいいんだよ。」
冷たい口調。そこには蔑み以外の何ものも含まれてはいない。
だが、ツナとて中学のときから10年、成長していないわけではない。
その脅しのような言葉にビビりながらもツナは言い返した。
「リボーンはもう仕事を終えたんだ。だからオレと別れて、今は知らないところにいる。
だいたいオレに触ることすら許可しないあいつがオレを助けにくるかよ。
昔なら仕事だったからともかく_____」
それで言えば、山本の方が・・・・・・と内心思うツナを見て、ヒバリはふぅん、と目を細めた。
(触らせない・・・・・・か・・・・・・)
§それは越えてはいけない境界線§
ツナは思う。
あの別れのときを。
『もうお前も立派なボンゴレファミリーのボス、10代目だ。
オレはこれで仕事完了。じゃあな』
こんな軽い言葉であいつは去り、自分はただ呆然として別れた。
赤ん坊だったリボーンが成長して5歳くらいになったときだった。
自分は18歳。
去る背中は最初に比べて随分大きくなったと思った。
5歳のくせに頭の成長が早いせいか体の成長も早いようで、すでにツナの胸くらいあった。
思わず服を掴もうとした手は、届かなかった。
「僕の情報では、時々君の前に姿を現しているそうじゃないか。」
「そんなの・・・・・・もしかしたら、オレの夢かもしれないんだ。
いっつも、見るときはなんか寝ぼけてたり酔ってたりするときだから・・・・・・」
茶色の髪が反対車線の車のライトを反射して光った。
それをちらりと見て、ヒバリは考え込む。
(わざとそういうときを狙っている?だが、何故・・・・・・正気のときに会うとまずいことでもあるのか?)
だが、それでヒバリは確信した。
自分はきっと、彼と会えるだろう、と。
そう思った瞬間だった。
マシンガンの音が響き、フロントガラスが割れる。
それでもヒバリは止まらない。それどころか車を加速させた。
確信は今、現実となって眼の前に現れた。
口元を弧に描いて、ヒバリは笑う。
「来た・・・・・・」
車を片手で器用に操りながら、窓の外を見上げる。
そこにはヘリがあった。
操縦席から再びマシンガンの銃口が向けられる。
何______と思うと、マシンガンによってボロボロにされたツナ側のドアがガシャン、と車道に落ちた。
それと同時にツナの体に縄がかかる。縄はヘリの操縦席の窓から延びていた。
操縦席には黒い帽子とサングラスをかけた子供。
その面立ちには見覚えがある。
「・・・・・・会えたね・・・・・・」
ヒバリは嬉しそうに笑った。
ヘリはほぼ横につけているが、それでもそこから投げて車内のツナを縄にくぐらせるのは大変だろう。
反対車線には車が迫っていたが、ヘリはぎりぎり車道すれすれに飛んでいた。
どちらにしろ、とんでもない腕だ。
車と正面衝突をする寸前、ぐい、とヘリが上昇すると、ツナの体に縄が食い込み、それも限界に達すると車の外に浮いた。
車は加速しているが、それに合わせたヘリと車との間に障害物はなく、ツナは容易にヘリの操縦席へと吸い込まれていった。
「んなっちょっ?!えぇ?!」
ツナはさすがに目を白黒させて驚いている。
ヒバリも驚かずにはいられない。
その間にもヘリは上昇を続け、あっと言う間に小さくなった。
焦ったのはツナだ。
ぶらりと操縦席の窓に手をかけるようにぶら下がっている。
下には町並みが広がり、高い。
はっきりいって、かなり怖い。
「怖っ!」
「さっさと上って来い。」
「そっその声!」
聞き覚えのある声にツナは顔を上げた。
だが、顔を見る前にわかっていた。こんな芸当ができるのはこいつしかいない、と。
「そんなっ無理だって!こんなっ風強いしっ!!」
「まったく、まだまだダメツナだな。」
「てか、縄食い込んでるっいってぇ!」
「それ以上暴れたり叫んだりするとあと一時間そうやってぶら下げるぞ。」
「ええっ?!すみません!リボーンさん!助けてください!!」
そう頼み込むと、リボーンはぐい、と縄をひっぱり、窓から中に入れてくれた。
だが、そこは無理難題をふっかけるリボーンだ。
「オレに触れるなよ。」
「はあぁああ?!この体勢でどうやって触れないで助手席に行くんだよ?!」
「死ぬ気でいけ。」
またか、とツナは涙を流しつつ、触れないように頑張って助手席へ移動する。
だが、途中で筋肉が持たずにべしょり、と崩れた。
腹あたりがリボーンに当たるはずだったが、その箇所は今、リボーンの銃で支えられていた。
銃口が腹部に当たっていて、今その引き金を引けばツナは致命傷だろう。
おそらくはさっさと行け、という意味なのだろうが、ヒバリに連れ去られてからずっと緊張で強張った筋肉はいったん緩まるとどうしようもない。
「仕方ない。」
リボーンはそのまま銃でツナを持ち上げ、助手席にポイ、と投げた。
細身とはいえ、23のツナを片手で投げるとは馬鹿力である。
どご、と鈍い音がした。
「〜〜〜〜多少触れてもいいだろうが、わざとじゃないんだし!減るもんじゃないし!」
「触るな、減る。」
昔と同じようによく感情のわからない口調でそう言うと、リボーンはふぅ、とため息をついた。
そのサングラスに隠れた瞳と同じ黒の髪が帽子からはみ出て、なびく。
ツナはそれを横目で見ながら、また身長が伸びたな、と思った。
おそらくツナより少し高いくらいだ。10歳にしては高い。
だが、やはり10歳で、筋肉はバランスよくついているみたいだが、まだまだ細身だ。
「・・・・・・誰かに頼まれたのか?」
「獄寺が騒いでいた。だが、頼まれてない。」
「・・・・・・仕事じゃないのに、助けたのかよ。
お前、別れてから会わないとかいいつつ、ちょくちょく会いにきて、一体どういうつもりなんだよ?!
金だって出してないのに・・・・・・」
「金なら貰っている。」
「?誰から?やっぱり仕事・・・・・・」
「ボンゴレの金庫からな。」
「おい!!それって盗みだろ〜〜??!」
相変わらずしれ、というリボーンにツナは突っ込みを飛ばした。
道理で会計係が冷や汗を流して謝りにきたわけだ・・・・・・
可哀想に獄寺に怒鳴られていたのを思い出す。後でフォローしておかなければ。
何よりも金庫のセキュリティが甘いのではないか、という問題はここではおきない。
相手がリボーンである限り。
超一流の殺し屋に加えて超高名な数学者だったりするのだから。
それが超一流の泥棒にならない保障はどこにもない。
「お前なぁ〜勝手に金とんなよ!
せめてオレに言ってからとってけ!」
「言っても言わなくても金がなくなるのは同じだ。」
「いや、全く違うから。」
ツナが昔と同じように突っ込む。
だが、リボーンはそれを無視して下を見た。
「ツナ、降りろ。」
「はぁ?!どうやってここから___っ」
「下は川だ。死なないだろう。死ぬ気で泳げ。」
「簡単に言うな・・・・・・本当・・・・・・」
だが、銃口を突きつけられてはツナは反抗できない。
口先で色々と文句をいいながらもぐいぐい、と窓際に追い詰められる。
だが、今更ながらに下を見ると、高い。それにツナは眼をむいた。
「むっ無理っ無理っ!!てか、なんで降りなきゃいけないんだよ?!」
ツナは首を振って否定するが、リボーンの辞書に容赦という言葉は存在しない。
なにやら不明の叫びをあげて、ツナは川に落ちていった。
「無理させたせいか、ヘリの燃料がなくなったんだ。」
理由はもっとお早めに。
ツナが落ちていった後にリボーンは小さなパラシュートで降りていく。
下にはがぼがぼと溺れているツナがいた。
「・・・・・・殺す気かよ。__っぷしっ」
「実践訓練だ。ちょっと平和ボケしてたようだからな。」
夏とはいえ、夜である。
ツナはぶるりと震えてびしょびしょの上着を脱いだ。
それを力を込めて絞る。
その横顔をリボーンは見詰めた。
10年経っても、童顔のせいかあまり変わった印象は受けない。
身長もあれからあまり伸びず、とうとう自分は追い越してしまった。
中身は少しはマシになったようだが、まだまだ自分からみれば甘い。
ぶつぶつと文句を言いながら絞るツナに、昔に戻ったような錯覚が起こる。
そのとき、濡れたツナの茶髪がきらりと街の光を反射して光った。
それを合図にリボーンの手がゆっくりと持ち上がる。
いつもに比べてその動作には躊躇いや戸惑いが見え、到底リボーンらしくない。
触ってはいけない
触れば、後戻りできない
情を移しすぎたというのに、これ以上_____
殺し屋にとって命取りになる・・・・・・
だが、リボーンの手は半ば無意識に動く。
服を絞るのに集中しているツナは気付かない。
あと、10センチ。
その柔らかそうな茶髪に触れられる。
あと5センチ。
「あ、獄寺くん。」
キキ、と音がして、黒塗りの車からグレイのスーツを着こなした青年が飛び出すように出てきた。
ツナが振り返る。
触れられそうだった手と髪の距離が遠くなった。
リボーンは手を引っ込めた。
今更、だ。
車から出てきた青年____獄寺がツナに駆け寄り、頭を深々と下げた。
「リボーンさんにここにいるって聞いて・・・・・・
10代目!すみません!!護衛の選択を誤って!!」
「・・・・・・獄寺くんのせいじゃないよ・・・・・・顔上げて・・・・・・」
獄寺が顔をあげる。
ひどく不安そうな顔だった。
それにツナは安心させるように笑う。
「オレ、大丈夫だから。」
それにひとまずほ、とした獄寺はリボーンに感謝を述べようと目を巡らせた。
だが、さっきいたその姿は見えない。
「あれ?リボーンさんは?」
「え?あれ?リボーン??」
遠くで呼ぶ声が聞こえる。
だが、決して気配を現すことも、振り返ることもしてはなら
ない。
それが正しい選択なのだ。
触れたくて、触れられない
それは越えてはいけない境界線
05.2.23
あとがき
リボ―ン初小説。
なのに、何故リボツナ??(+ヒバリと獄寺)・・・・・・本当は獄ツナにしようと思ったんですけどね。なんかリボ←ヒバツナ小説を書いていたサイトさんに影響されました。(笑)
そのリボーンがかっこよくて、今回「オレが触れると半殺しにするくせに〜」というツナの内心のセリフからネタとりました。『触れない』っていうのは、こう、萌えますvv
ツナとかの性格がまだ正確につかめてなくてすみません・・・・・・
「リボーン」ではヒバリ様に惚れました。最初の萌えは獄寺くんなのですが。てか、今も獄寺くんはかなり好きです。忠犬って感じで。
あの目つき悪い不良がどうして「十代目!」とかいって眼を輝かせる少年になってしまうのか・・・・・・あのギャップが堪らない〜vv可愛いし、途中勘違いしまくりだし、で結構かっこいいし、の獄寺くんに一票。
てかね、リボーンのキャラは眉毛がいいと思います。あの微妙なつり具合と眉の寄せ具合がかっこいいです。十年後ランボウケるし・・・・・・あとがきといいつつ、リボーン感想ですみません。しかし、主人公の周りは皆美形ばっかりで困りますな、ビアンキとかディーノさんとか・・・・・・