例えば俺があそこでNOと言わなかったならば
少なくとも
あいつがこんな早くに死ぬことはなかったのだろうか

「ボンゴレ十代目。
覚悟はよろしいかな?」

向けられる殺気。
殺伐とした空気。
逃れられない運命。





君ヲ想フ





「さすがはボンゴレとでも言おうか?
怯えも恐怖もないようだな。……だが、それではつまらない。」

後ろに縛られた手。
縄が食い込んでその手首の皮を容易に破る。
乱暴に広場に放り出されて、足元が絡まり、よろける。
けれど何の怯えもなかった。怒りと悲しみだけがその胸のうちを支配しているようだった。

『お前が守りたいものを勝手に守ればいい。俺はその背中をけっとばすだけだ』

怯えなど、あいつが死んだ時点で消えてしまった。
あいつが消えることが一番の自分の怯えだった。


ドン


頬を、銃弾が掠め、血が流れ出す。
それでも、綱吉の瞳には悲しみと少しの怒り以外の色は表れなかった。
そのことにつまらなそうに目を細めて、ミルフィオーレの幹部は銃を構えなおした。

『……リボーン、呪いのこと、聞いたよ』
『そうか』

どうして、彼はあのときあんなにも静かでいられたのか、わかった気がした。
今の自分と同じだ。
自分がここで死んでも、自分の意志を継いでくれる人たちがいる。
その人たちが必ず、大事な人を守ってくれるだろう。
この手で守れない悔しさよりも、今後大切な人を守ってくれる確証が今は嬉しい。

きっと今、守護者たちは自分を助けようと必死なのだろう。
きっと今、大切なあの子は自分を思ってくれているのだろう。
きっと今、阿呆なあの子は自分に向かって恨み言を吐いているだろう。
たぶん今、馬鹿なあの子は泣きながら走っているかもしれない。
たぶん今、自由な二人の守護者は領域を荒らされて怒っているかもしれない。
たぶん今、今……

こうしてお前のことを考えられないことが何よりつらい。
俺より先に逝ってしまうなんて、嘘だろう?
お前が先に死んでしまったら、俺は笑って逝けないではないか。
ねぇ、嘘だろう?
せめて、俺の後に死んでくれよ。

例えばもし、あのとき俺がYESといっていたならば
少なくとも
お前はまだ生きていただろうか


『リボーン』
『どうした?眠れないのか?』
『お前、どこに行くつもりなんだ?』
『お前には関係ない』
『嘘つき』
『嘘じゃない』
『なら、きちんと俺の目見て言えよ。』
『……』
『!!!__っリボーっっ』
『うるさい口だ』
『っっぁっ』

あのときの口付けの熱さなど、忘れてしまったよ

『っはぁっこんなんっじゃっ___っ騙されないからなっ』
『もう、黙れ』

これで、終わりになるのだと理解した途端、涙が溢れた。
終わりだなんて、お別れだなんて、一言も口に出してはいないのに、何故か、わかってしまった。
口付けがいつもよりもずっとずっと長くて、息が苦しくて、ついでに胸も苦しかった。
このままこのキスで殺して欲しいと思った。
お前を失うくらいなら、失うくらいなら_____

涙を、拭ってくれたあいつの顔もぼんやりとしか思い出せない。

『…なんで、こんなに、好きなんだろうな』

疑問系でぽつりと呟くようにされた、初めての告白は、俺の涙を増大させた。
その声だけが今も鮮明に耳に残っている。


数十の銃口がこちらに構えたのが見て取れた。
けれど、それはもうどうでもいいことだった。
空が、見える場所で良かったと思う。
もう少しで泣きそうな空を眺めながら、呟く。

「なんで、まだ、こんなに好きなんだろうな」

お前はもう、いないのに。






例えば俺があそこでNOと言わなかったならば
少なくとも
あいつがこんな早くに死ぬことはなかったのだろうか

否、あいつは俺を殴って
嫌でもNOと言わせただろう












07.08.05
あとがき(今週ネタバレ注意)
暗い。なんか、ツナの方はカモフラージュ的に死んだのかと。ボンゴレ幹部が死んだフリさせてるのかと思っていたのに…今週のフゥ太の発言から本当に死んだっぽくてものすごいショック受けました。でも、ヒバリさんとツナの特訓は見逃しません!」