「君は僕のためだけに泣けばいいんです。」

幼い少女の亡骸を抱いて泣く綱吉に骸はそう言い放った。





白蝶葬列





ひらひらひらひら
あら、綺麗なちょうちょね
ヒラヒラヒラヒラ
虫籠に閉じ込めましょう
わたしだけのためにその美しさが存在するように


「ごめんね、ごめんね」


少女と知り合ったのはつい一時間前。
綺麗な白い百合を籠いっぱいにつめこんで、笑いかけてきた。
白い花の美しさと、その笑顔の愛らしさについつい一本買ってしまった。

『そんな花捨ててしまいなさい。』

何故だか不機嫌そうに、散歩に勝手についてきた骸が後ろで言った。
何を___と後ろを振り返る瞬間に、視界の片隅に入った銃口。

白い花が、ひらひらと、舞い散った。


「俺が、関わらなければ良かった。」

日常茶飯事の、敵対するマフィアからの銃撃。
流れ弾が綱吉が庇った少女の胸を貫いても不思議では_____ない。
銃口を向けた男たちを一掃し、綱吉は少女を抱きしめる。
(そんなことしたら、折角のスーツが汚れてしまうのに)

「ごめんなさい。ごめん・・・・・・」

ぽたぽたと透明な雫が綱吉の頬を伝り、少女の頬に小さな、小さな雨を落としていく。
(空はこんなにも青いのに、どうして雨なんかが降らすんですか)
とうとう雨は小さな水溜りをつくって、少女の頬を流れた。
流れていく先は、赤い海。

「俺のせいだ・・・・・・また・・・・・・」

ぎゅう、と唇を噛む仕草に、それに呼応した腕の力の強まり。
眉根を寄せる綱吉の頬を撫でる風は、けれどいつもと同じく生暖かい。

「日常じゃないですか。そんなのは」
(いつまでかまっているつもりですか)
「早く帰らないと日が暮れますよ」
(さっさとそんなモノ捨ててしまいなさい)
「さぁ」

骸の放つ言葉に、綱吉はゆっくりと振り返り、悲しそうな瞳をした後、何も言わずに首を振った。
遺体を持ち帰ることも、ましてや土葬することなどできないことはわかっていた。
けれど_____

「・・・・・・」

少女を道路の脇に横たえ、綱吉は少女の持っていた花籠の中身をひとつ取り出すと、少女の心臓の上に落とした。
そしてまたひとつ、今度は首筋に。
そしてひとつ、今度は腕に。
頬に、手首に、鎖骨に。
どんどんと少女の遺体は白い百合で埋まっていく。
白い百合は芳香強く、血の香りすらも曖昧にしていくようだ。

最後のひとつを籠から取り出すと、ふと、その花の中から白い蝶が飛びたった。
白い花の花びらともまごう白い、白い蝶。
ふわり、と綱吉の目の前で宙を舞い、青い空に向かっていった。
それを綱吉は目で追う。
けれど、その蝶は次の瞬間、赤く燃えあがった。

「!!!」

瞬きをすると、そこには蝶を握りつぶした骸の拳があった。

「どうして、貴方はそんなことをするんですか。」
「君が、余所見をするからですよ。」



君は僕だけの蝶
白くて透明で
きっと自分の涙でその羽を濡らし
飛べなくなってしまうのだろう









07.01.20

ある曲から。綺麗で、この世のものとも思えぬ光景なんだろうと思います。