何にもわかっちゃいなかった
自分の痛み以外
何もわかっちゃいなかった

でも、その痛みだけが過去と自分を繋ぐ糸だと
そう思い込んでいた




鏡裏





「・・・・・・信じらんねぇ」

いつの間にか二人の下敷きになり、ぐちゃぐちゃになった自分の着物を手繰り寄せながら銀時は高杉に聞こえるように言った。
しかし、高杉は銀時の布団を占領し、壁の方を向いているためにその反応はわからない。
起きている気配はするものの、すでに固く閉じた貝のような態度になっている。

「・・・・・・あ~あ。これじゃあ寝れねぇし。ったく。」

だらしなく汚れた着物を着て、銀時は庭へと出て行く。
先程曇っていた空は少しその厚さを減らし、おぼろ月が天上に輝いていた。その下を歩く銀時の髪はその名の通り、銀色に輝き美しい。
かつては整然と手入れされていたであろう庭も原型は留めておらず、木や植え込みの場所が計算されて植えられたままの場所にあるだけである。植物たちも気のむくままに成長し、美しかった庭はただの林の一部にしか見えない。
その中を少し歩くと、成長しすぎて塀に根や枝を食い込ませている大きな木がある。
そして、大きな木の下にはいまだ枯れずに残る井戸が残っていた。この周辺の井戸は民家も多く、まだ天人が毒や他の細工をした噂はない。
銀時は誰にも見られないようにきょろきょろと周りを見渡しながら、誰も起こさないように井戸の水を慎重に汲んだ。
何せ、月明かりの下で見た自分の格好は本当にひどいことを、いくら鈍い銀時でもわかっていたからだ。
白い着物はあちこちが精やら血やらの液で汚れ、頭もいつも以上にぐちゃぐちゃである。
その上首元や胸元は高杉が噛み付いた歯形が残り、痛々しくも血がまだ滲んでいる。

「吸血鬼かっての。」

とりあえず誰もいないことを確認すると、着物を脱ぎ去り、全身を水で洗う。
温かい季節だからまだ良かったものの、これが冬だと思うと銀時はうんざりした。
元凶の男は未だ自分の部屋でフテ寝をしているだろう。
合意の上とはいえ、何もここまでひどくしなくてもいいだろうと、恨みをこめて今度は着物の方を洗う。
血は中々落ちずとも、とりあえず精さえ落ちれば今日はいいだろう。

「あ。やべ。」

だいぶ綺麗になり、これなら着れると思った瞬間、銀時は大事なことを知った。

「これ、濡れたまま着るしかねぇじゃん。」

仕方なく、その怪力で洗濯機の脱水機並みに水分を落とすと、冷たい着物に袖を通した。
素肌に濡れた着物は冷たく、じわりじわりと熱を奪われていくようだ。
ぶるりと震えて早く帰ろうと踵を返した瞬間、じゃり、と後ろから音がした。

「まぁだ起きちょったか。」
「・・・・・・辰馬・・・・・・」

萌黄色の着物を纏い、夜だというのに活発に歩いてくるのは同士の坂本辰馬だ。
じゃりじゃりと他の眠りを気にしない豪快な歩きで近づいてくる。

「ほぅ」

近づいて、辰馬は目を見開いて銀時をじろじろと見つめる。銀時はその目線に見透かされたような気がして、胸元と首元の歯形を隠すように着物をかき合わせた。

「血、ついちょるぞ。大丈夫がか?」

頬にもついていたらしく、辰馬が頬に手を伸ばす。
辰馬の声がいつもどおりだったことに安堵した銀時は、次にいつの間にか抱きしめられていることに驚愕した。
軽く引き剥がそうとしても、しっかり抱きしめられているのかびくともしない。

「おいおい、辰馬?」

銀時が顔を引きつらせて問うが、その答えにはとんでもないものが返ってきた。

「残念ぜよ。おんしの初はわしと密かに決めちょうに・・・・・・」
「・・・・・・はぃ?」
「知ってたぜよ。おまんがオナゴ日照りの戦闘中にはちょいと隊士をつまみ食いしちょるのをの。」
「・・・・・・言っとくけど、アレは俺からじゃねぇ。あっちからシテクレって寄ってくるんだぜ?」
「知っちょる。知っちょる。まぁ、どっちにせよ、銀時、おまんはヤル専かと思っちょう。まさか、ネコになることもあるとは思わんかったぜよ。」
「・・・・・・」

辰馬の問いに銀時は少し眉をひそめるが、何も言わない。
先程からの抱擁に対する抵抗も今は諦めて辰馬のなすがままになっている。

「・・・・・・だから、おまんがもし、タチじゃなき、ネコになるっちゅう時がくるんであれば、その初はわしが欲しかったんぜよ。」
「アホか。」
「アホじゃないきに。そこまでおんしを気に入っちょる証拠じゃき。」
「って、どこ触ってんだよ、毛玉。」

会話の途中から辰馬の手が銀時の下半身に伸び、着物の隙間から進入してきたのだ。
銀時の文句も気にせずに、辰馬は後部からの進入を果たす。

「っっつっ」
「なんじゃ。傷ついちょう?・・・・・・ん?」

辰馬の疑問の声は中に入った手が湿ってきたからだ。そこを押し広げたことで中に入っていた蜜が漏れてきたようである。
そのことに気づいて、銀時はさっと頬を紅潮させた。先程身体を洗ったときに気づいていたが、さすがに自分でそこをいじって中の蜜を出すことはできなかったのだ。

「ちゃんと出さないと下痢とかになっちょう。わしが出しちゃる。」
「ちょっいいってっ」

ぐり、と奥まで進んだ指に銀時は焦って止めるが、あいにく情事と戦闘で疲労した身体はこの体勢ではあまり役に立たなかった。
奥まで進んだ指は中の蜜をかき出すようにぐるりと内壁をなぞった。その瞬間、指が銀時の快楽に触れたらしい。
びくりと高い声を上げて銀時が跳ねた。

「あっっ?」
「ん?ここか?」
「あっんぅっちょっっ」

高杉との行為では痛みが大きすぎて感じなかった快楽を今更のように与えられる。
先程痛みしか感じなかった銀時は頭の中にはてなマークを浮かべながら、己の声と反応に羞恥してどうにか逃れようともがいた。

「なっ何っ__っぁっ」
「何って、男の後ろのいいところぜよ。なんじゃ、さっきこっちでイったんじゃなき?」

どうにも銀時の反応が初々しいので、辰馬は首を傾げる。
頬を紅潮させながら、どうにかこの快楽から逃れようとしているが、手は辰馬の着物を握り締めている。
普段の銀時からは考えられないくらいに乱れたその姿は、辰馬の男の部分を大いに興奮させた。

「うっそっ」

銀時は自分の前も着物を押し上げて自己主張しているのがわかった。
それは辰馬も気づいているだろうが、辰馬は後ろだけを攻めて、前をいじろうとはしない。
後ろだけの快楽でもいけるのだろうが、先程から前が辰馬の着物に擦れて中途半端に反応しているのだ。

「たっつまっ」

焦れた銀時が前を辰馬に擦りつけることで、前も触って欲しいことを暗に示すが、辰馬は優しく笑うだけで後ろを弄ぶ。
何箇所か見つけた快楽を辰馬は巧妙に強弱をつけて攻める。そのたびに身体が揺れ、前が刺激される。

「はぁっあっ___っもっ」

だんだんと快楽で頭がぼんやりとし、身体が快楽をもっとと、貪欲に欲しがる。
銀時は羞恥をかなぐり捨てて、自分で前を弄り始めた。

「くそっあっあっっっんぁ」
「なんじゃ、意外に積極的じゃなか。」

目の前で自慰をし始めた銀時に目を真ん丸くしてから、辰馬はにやりと男くさく笑った。
銀時の右足を左手で持ち上げ、その掌を銀時の背中に回して体勢を安定させると、右手の指でさらに深くを抉る。快楽を擦る激しさと速さはだんだんと加速していき、それに合わせて銀時の自慰の速度も上がる。
銀時の白い肌に浮かぶ汗が月光を反射してきらきらと光った。

「くっあぁあっ____っあっっっっ」

びくりと一際大きく銀時が跳ね、前が弾けた。それは辰馬の着物を汚し、少しの間どろどろと出続けた。

「溜まっちょう。なんじゃ、さっきはおんし出さんかったんか。痛いセックスば、しちょるのぉ。」
「っるせっっ」

まだ息が整わないのか、肩で息をしながら、銀時は辰馬を睨む。
その視線を受けて辰馬は豪快に笑うが、夜ということもあってかその声は小さい。
果てた後の脱力感と満足感に揺られながら、ふと銀時は少し触れる硬くなっているものが気になった。

「・・・・・・つか、てめぇはいいのかよ。」
「ん?ああ。ついついおんしの痴態見たら興奮しての~。まぁ、後でなんとかするき、おんしが気にすることじゃなき。」
「・・・・・・手でならしてやるぜ?」
「嬉しいこと言ってくれるぜよ。でも、今夜はかっこつけさせちょう。」

そう言いながら、辰馬は銀時の顔に軽いキスを降り注がせる。そのついでに銀時の乱れた着物を整えてやるのも忘れない。

「この借りは今度返してもらうぜよ。今度が楽しみじゃき。」
「なってめっ」

文句を言い始めようとした銀時の唇にキスをして、それから辰馬はしぃ、と自分の唇に人差し指を添えた。

「なんだかの、怖~い気配がするき、今夜はこれで退散しちょう。またの。」

ひそりと耳元で呟いて、辰馬は踵を返すとさっさと闇に消えてしまった。
一人また井戸の前に残された銀時は首を傾げた。

「・・・・・・怖い、気配?」


「銀時」


「____っっ!!」

びくりと大げさに身体が揺れた。
心臓が鷲摑みにされたかのような衝撃を受け、どきどきと鼓動が収まらないままに振り向く。

「た、高杉」

淡い月の下、高杉の普段黒髪に見える髪の毛の色は紫に光って見えた。
前髪で隠れていない右目が深い緑の色を宿す。

「おせぇよ。水浴びにどれだけ時間かけてんだ。女か、てめぇは。」

ざり、と自分に向かって歩いてくる高杉に銀時は動揺した自分を認識する。その動揺を隠すために、わざといつもよりもそっけなく言葉を放つ。
それがどれほどの効果を持つかも知れず。

「っせぇな。別にいいだろ。どれだけ時間かけようがかけまいがよ。」

高杉が近い。
どんどんと近づいて、息遣いが感じられるほど近くまで来る。
その近さに比例して銀時の鼓動はどんどんと速くなり、音が大きくなるような気がした。


「・・・・・関係ねぇだろ。」
「あるね。」


あと少し顔をずらしたら接吻できるところまで接近した高杉は低く囁いた。
びくり、と身体が揺れた自分を銀時は悔しく思う。
後退りしそうな身体を矜持で必死に保ち、視線をかち合わせる。

「てめぇ、何坂本に触らせてんだ。」
「覗き見とはちょっと趣味が悪いんじゃあないの、高杉くん。」
「けっあんなよがり声上げといて___わからねぇ馬鹿はいねぇよ。」
「なっっ」

緊張の面持ちだった銀時の顔が紅潮し、動揺が露わに高杉に伝わる。
無意識に後退りそうになった銀時の手を高杉が素早く掴んだ。
痛いほど握られて高杉の口元に手首が引っ張られる。
何を、と思う間もなく手首に噛付かれ、痛みが走った。じわり、と血が流れ出たのを感じる。

「高杉・・・・・・やめろ」
「やめねぇ。」

手首から流れた血を高杉がこれ見よがしに舐める。
視線は銀時から離さないまま。
銀時は目を離そうにも離せない。



高杉の月光で碧玉に鈍く光る瞳は、狂気を映していた。













あとがき
攘夷過去捏造第一弾。
とりあえず、高杉と銀さんの馴れ初め。と坂本と銀さんの馴れ初め。
とりあえず坂本の土佐弁がわかりずらい、というかよくわかりません。もう。すみません。
高杉は弱いけど攻めです。笑。銀さんはやたら怪力だけど受けです。笑。
今度は桂出したい。