誓い4




目の前にいるのは自分が生んだ幻ではないのか。
思うが故に幻想を生み出したのではないか。

一歩踏み出して、近づいて、呼ぶ。



「・・・・・・・・キ・・ラ・・・・」

このもどかしい距離に耐え切れずにイザークはキラに近寄って抱きしめる。
強く、強く。
二人の間に隙間さえなくなるほどに。



如何して此処にいるとか、
今までどうしていたんだとか、
質問すべきことは多かったはずなのに、
いざ目の前にしてみると、生きていてくれたという思いで胸がいっぱいになって、
結局気の聞く言葉も言えずにただ抱きしめていた。

この思いが密着したところから届くのではないかと思うくらいにきつく抱きしめて、



もう、離しはしない。



そう心に決めた。
言いたいことは溢れるほどにあって、その溢れるばかりの思いで胸が詰まる。
この瞬間だけのために自分は生き残ったのだと確信した。







「・・・・・イザーク」

呆然とキラはその人の名を呼ぶ。

『誰かを待っているのか?』

待っていた?
そうだ。
どこに行っても、見つけてくれるとどこかでそう信じ込んでいた。
自ら彼に此処を告げなかったくせに・・・・・





僕を求めて・・・・
他に何も目に入らないくらいに。
僕を追い詰めて・・・・
貴方だけを考えられるように。





僕は測っていたのだろうか。彼の思いを。
ずるい自分。
そうしなければ安心できなかった。

戦争、失われていく多くの命、積み重なる哀しみ。
平和をもたらそうとがむしゃらに走った。そして、戦争は終わった。その中で生き残った。僕はどうしたらいいのだろう。
生き残って、平和になって誰のもとに帰ろうというのか。
どこに帰ろうというのか。
何もかもを、終戦という大義名分のもとに押し込めてこの手で壊して・・・・
貴方の顔が浮かんでは消えて、僕は頭を振って、頼ってはいけない。頼ってはいけないと自分に言い聞かせた。



イザークは少し怒ったような声音でキラに言う。

「側にいろといっただろう。
離さない。
お前が離れようとしても、もう、離さない。
もう、離れられない。」

離れられないのは僕の方だ。

温かいものが一筋頬を伝った。
やっと自分の場所を見つけた気がした。否、分かっていた自分が望む場所は。でも、そこにいていいのかわからなかった。

彼の戦友を幾人も殺し、生き延びた。憎まれているのだと・・・・そう、思った。いいや、心優しいあの人は苦しんでいるかもしれない。
それとも、もう自分のことなんて忘れてしまっているのではないか。
そう思うと怖くて仕方なかった。戦争の終わった今、何をすればいい?失ったものは多く、得たものはあまりにも少ない。自分は何を得ただろう。

信頼も友情もなにもかもが壊れて、傷つけあいながら戦い抜いた。
自分は戦いすぎたのかもしれない。
破壊しかしなかった。
築くことをしなかった。
否、築こうとしてもそれはあっけなく崩れ去り、無力感だけが漂った。
いつか怯えきった自分がいた。虚勢をはる自分がいた。
まだ戦争は終わっていないと囁く声が聞こえた。
緊張感は続いていた。





でも、貴方にあって、
やっと戦争が終わった気がした。
自分の戦争が。意地が。

今まで封じ込めていたはずの感情がすべて溢れ出して、何が哀しくて、何に怒って、何を憎んでいるのかごちゃごちゃになって、ただ耐え切れないように泣いた。
抑え切れないように嗚咽が漏れて、涙なんて止めようも無かった。
次から次へと溢れてきた涙が彼の服に染みをつくって、強く握ったせいか、気づいたときは服はぐちゃぐちゃになっていた。同様に僕の顔もそうとう崩れてしまっていたに違いない。

「戦争で、人の命がどれほど脆いものか知った。
終戦のためにといって、この手で殺した人がいる。
殺せば殺すほどにこの世界はかすんで見えていった。
かすめばかすむほどに・・・貴方の顔が浮かんで・・・」
「・・・・」

イザークは何も答えない。答えられようもなかった。
キラは顔を上げて力なく笑った。

「弱いね・・・・・・僕は・・・・・貴方に引っ張ってもらわなければ何もできやしない。
貴方に・・・・・・重荷を・・・・・・イザーク・・・」

まだ赤い目からまた雫が落ちた。

「どうしてお前の思いが重荷なんだ。俺の方こそ・・・・」

ここまで求めてしまって・・・・これがキラの重荷にならないとはいえないだろう。

「ならないよ。僕は貴方が僕を必要としてくれて嬉しいよ?」

キラは目をはらしたまま、それでも柔らかく微笑んで。
ほら今だってそんな簡単な言葉で俺を楽にする。

「・・・・・俺もだ。それでいいんじゃないか?キラ」
「うん・・・・・そうだね。」

それは単純なことで。
単純だからこそ不安で。







「・・・キラ・・・・愛してる」

好きだと言おうとしたのに、思いは頭で想像した以上に膨らんでいて。
愛している____それでもいい表せないほどの思い。
それはこれからゆっくりと伝えていこう。

だって、お前はこれからずっと俺の側にいる。
いや、俺がお前の側にいるから。











「・・・・・ずっと側にいる。」

キラが小さく頷いたのがわかった。











あとがき

なんちゅーか地の文と登場人物の気持ちの区別がごちゃごちゃかもしれません。すみません〜(汗)

ってか、これキラが消極的すぎ?キラくんはでもぼろぼろだと思うのです。甘えてきただけにこれからは頼らないでいこうとか張りつめたりしそうだし。戦争っていうのは肉体にもダメージを与えるものですが、それと同時に精神にもカナリのダメージを与えるものだと思います。

タージさん(←適当な名前ですいません、一体どこの人だよ。)とキラの話は機会があればまたそのときにかこうと思ってます。戦争の爪あとのような・・・

戦争は突然やってきて突然終わりを告げたりしますが、個々の人の中ではいつまでも残るものだと思います。その人によって終わったと感じるときが違うのではないかと・・・

お偉い方に振り回されて傷ついて、失って・・・そんなに戦争したけりゃ自分でやれとかいいたいですよね。そんな単純ではないかもしれないですけど。彼らが頭の中で策略を練っている間にも死人がでていることは知って欲しいですよね。

長いわりにまとまりなくてすみません。なんかかきたいこと押し込んだ感がありまして・・・・(汗){あとがき長くなってしまった(汗)ここまで読む人はいないだろうけど・・・}