傷痕
「これは憎しみを忘れないための戒めだ。
この痕がある限り、あいつのことを決して許しはしないだろう。くく・・・」
「イザーク・・・・」
整った顔が憎しみで歪む。
その様はどこか哀しく、醜い。
他のパイロットの三人はその憎しみの深さを知る。また、イザークのおかしいほどの執着に目を見張った。
そうさ、あのストライクのパイロット・・・決して許したりしない。
俺がこの手で息の根を止めてやる。
その前に俺が味わった痛みの数倍もの痛みを、あいつに味わせて・・・
屈辱に染まった顔を拝ませてもらおうか。
くくく・・・この俺にこんな屈辱と興奮を与えてくれたお返しに・・
あの奇跡のような速さ。
コーディネーターでも稀な輝き。
嫉妬だ。
何故俺にはあのように操作できないのに・・・ナチュラルごときが!!
嫉妬しつつ目を奪われるのは限りなき屈辱。敗北。
アスランに対してとは比較にならぬほどの怒り。憎しみ。ねたみ。
そして、快感。
お前は今度はどんな華麗な舞を踊ってくれるんだろうな・・・・
「イザーク・・・・」
そっと白い華奢な手が傷跡に触れる。
「この傷は・・・・」
「安心しろ。つけた奴を殺してから消す。」
イザークは他の者の前ではしないであろう笑みをその美しい顔に浮べた。
だが、相手はそんなことではないというように首を振る。
「・・・・憎しみを刻んでいるの?」
哀しみを宿した瞳。
透き通った、それでいて深く柔らかい紫電の瞳。
この世のどんな宝石であっても、この瞳の前にはその輝きを失うだろう。
その瞳の美しさにしばし見惚れる。
「憎しみなんか、刻まないで。
貴方の心に、身体に、忌まわしい刻印なんて・・・似合わない。」
桜色の小ぶりな唇が近づき、傷跡に口付けたのだと知るのに数秒。
柔らかく、痛みを与えないようにゆっくりと、動く唇。
そっと、花びらが落ちるように痕に沿って口付けていく。
その感触が心地よくて、目をつぶって身を委ねた。
「お願いだから・・・憎しみに囚われないで。
憎しみに呑みこまれたら、もう、戻れない。」
震える声。
いつもより、細い声。
頬に熱い何かが落ちた。
涙だった。
その白い頬に幾筋もの涙が滑り落ちる。
綺麗な涙で、もったいないと思って自分の口でそれの流れを妨げた。
「・・・・・泣くな・・・」
「・・・・・」
「お前に泣かれると困るんだ。
俺はお前の泣き顔も綺麗だと思うが、笑顔の方がもっと綺麗だと思っているからな。
それに・・・お前に泣かれると、苦しい。」
その言葉に彼は目を見開く。そして、少し、だだっこのように、咎める目で見た。
「貴方のせいですよ・・・・・」
「分かってる。傷跡ごときでキラが泣く必要なんて無いのに・・・」
「“ごとき”なんてっ!!その傷跡の意味は貴方が良く知っているんでしょう?!
憎しみなんて・・・消えた方が良いに決まってる。」
怒って紅潮する姿にも目を離せず、目を合わせたまま、深くキスした。
「傷跡はお前が消してくれるだろう?キラ・・・・」
耳元で、そんな声で囁かれたら、もう反論できない。
ずるいよ、貴方は・・・
俯いたキラにイザークは微笑んだ。
あとがき:イザーク今のところ強し。ストライクのパイロットはキラということで。キラ以外にイザークの顔に傷をつけるなんて許せん!!で、キラとイザークはお互い立場知らないという設定でしょうか。