「始めるか」
『ああ』
そこにはひとつの白いガンダム。
羽根は青い。
名前は_______自由。
「それを掴むための力をこいつは持っている。」
『頼んだ』
「おぅ」
踏み出す闇
「やぁ。調子はどうだい?
あ、俺はトノムラ。ジャッキー・トノムラ。トノムラでいいよ。
さっき来た緑髪の奴はシャニ・アンドラス。シャニでいいよ。」
「あ、はい・・・・・・」
目に光がない。
反応も1テンポ遅れている。
相当なショックだったらしい。
「・・・・・・僕は・・・・・・太陽を失ってしまったんです・・・・・・どうすれば・・・・・・」
「・・・・・・太陽などなくたって、歩いていけるよ。手探りで進んでいけるよ。」
「・・・・・・」
太陽を失った瞳は暗い。
すべて白い部屋で、本人の思考も白くなっていってしまったのか。
「・・・・・・君は真実という奴を知ったのか?」
「・・・・・・真実・・・・・・」
『あなたには真実を知る権利がある』
「どうして・・・・・・知ってしまったんだ・・・・・・」
知らなければあのまま楽しく過ごせたのに
「君は知らない方が良かった?
何も知らずに、あのまま過ごせて本当に良かったのか?」
トノムラは真剣な表情で問う。
「知らなければ・・・・・・」
アスランと笑い合えた
あのまま幸せにアスランの盾となって
そして幸せに死んでいた
両親の不可解な死を封印して
何も知らず
操り人形のまま
「・・・・・・君を攫った馬鹿のことは謝るよ。こちらも説得して連れてくるといわれてたんだ。
ただ、君は知ろうとしたのだろう?コンピューターに道筋があったとしてもそれは困難な道なはずだ。
それをわざわざ辿った君は、真実を知る覚悟があったんじゃないのか?」
すべてをケイのせいにして逃げるのもまた、楽な方法だ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙。
「悪かった。突然の状況に戸惑うのも無理はない。
もう少し考えるといい。」
謝罪。
「もう少しも時間なんてないだろ。
さっさとある程度覚悟決めてもらわなきゃ、さ。」
突然響いた別の声。
ドアの前にはシャニが不機嫌そうに立っていた。
「守りたい奴がいるんなら、余計なこと知らないほうがいいって、お前もわかっていたくせに。
それでも真実を望んだんだろう。」
キラは応えない。
青ざめた顔でただシャニを見ていた。
「本当、お前みたいな奴ってむかつく。
自分だけが不幸だと思っていやがる。
この世の中、戦争の被害にあった奴なんてたくさんいる。
親を失った子供だって、たくさんいる。
お前だけじゃないんだよ。」
「・・・・・・」
「それでまた、守りたい人がいる?
違うだろう?守りたかったわけじゃないだろう?
そいつに縋ったんだろう?
そいつに自分の人生背負わせたんだ。
自分で背負うのが嫌になったから。
はっよくそんな甘い覚悟で生き残れたな。軍人のくせに」
「・・・・・・んなに、いけないことですか。
両親が死んだから、もう大切なものは失いたくないって思っちゃ、間違いですか?!
確かに軍人は戦いの最中にいるから、守るとか、守られるとか、そんなことは非現実的なのかもしれない。
それでも!
失いたくないっ守りたいって思うのは、いけないことですか!」
「じゃあ、何故今迷っている。」
「・・・・・・」
「そう思ったんだろ。じゃあ、そうすればいいじゃないか。
ここで知ったこともすべて忘れて、そいつの元に帰ればいい。」
すべて忘れて
今まで通り
両親の死の原因も忘れて
これまで通り
笑って泣いて
道具とされながら
本当に?
本当にそれでいいの?
嘘と偽りの中で
必死に彼を守りながら
それでも嘘と偽りに染められないなどと
決して思えなくて
「僕は・・・・・・」
「結局、そいつは言い訳に使われた哀れな奴だ。
お前が哀れにした。」
「ぼ、僕は、誓ったんだ・・・・・・」
「両親のことがなければ、そんな誓い忘れてたくせに」
「そんな、ことは・・・・・・」
過去の思い出に縋ったのか?
「シャニ、もういい。行くぞ。」
「んだよっこいつ、ぜんっぜんわかってないんだぞ!!」
「お前は口が悪すぎるんだ。」
そう言いながら、トノムラはシャニを引きずるようにして部屋を出て行った。
白い部屋はまるで声を吸収してしまったかのように静まっている。
「僕は・・・・・・」
扉を開ける。
真っ白な世界から踏み出す。
外は広い。
『どうだ?』
「ん?昨日とうって変わってうろうろしてるよ。
今は外見てる。」
『外?』
「天窓だよ。外、というかほぼ太陽の光しか見えないけど」
『そうか・・・・・・』
「話すか?」
『いや、どうせ、すぐに会う』
「そうだな」
プツ
「ケイ?」
「ああ、何?」
「今、誰かと話してなかった。」
「いや、別に」
「そうか」
カズイを降ろして以来、トールたちの明るさが息を潜めた。
後悔しているのかもしれない。
自分たちも一緒に降りなかったことに対して。
「いずれにしろ、潮時かな」
牽制にするつもりだったが、大して意味もなかったかと、ケイはため息をはいた。
******
「全員を降ろしたい?」
「おいおい、本部はすぐ目の前なんだぜ?」
「貴校、自分が何を言っているかわかっているのか?」
マリューは純粋に驚き、フラガは訝しそうに顔を歪め、ナタルは不機嫌そうに眉をひそめた。
三者三様の反応にケイは微笑む。
「ええ。彼らはもともと学生です。
本部に行ったら、このまま軍人として過ごすことを強要されるでしょう。
それを防ぐために、本部に行く前に降ろしてもらいたいのです。」
「お前がもともと推薦したんじゃないか。」
「あのときは咄嗟の判断ですよ。
もう本部はすぐなんですから、彼らがいなくてもなんとかたどり着ける。追手もいませんしね。」
しばらくの沈黙。
そして、ナタルが口火を切った。
「私は反対です。
彼らは解放するにはこの艦のことを知りすぎています。」
「俺は賛成するよ。もともと、軍人志望でもないのに巻き込んじまってさ。
感謝こそすれ、縛ることはできないな。」
「・・・・・・私は賛成です。
彼らを巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思っているの。
一人を降ろしたときに全員降ろしてあげればよかったわね。
彼らの好意に甘えてしまったわ。」
これで決まった。
ナタルもその意を知っている。
釘をさすことだけは忘れない。
「わかりました。
ただ、この件は本部に報告させていただきますので。失礼します。」
肩をいからせて、退室する。
それにフラガが苦笑した。
「やれやれ。まぁ、軍人てのはあれが正しいのかもな。」
「貴方は?」
「俺?俺は別にお偉いさんのために命張ろうなんて思ってないさ。
ケイ、お前は?」
「私は、そのつもりですよ」
「嘘付け」
「いえいえ、では。このことを彼らに伝えてきます。失礼します。」
ケイは人を食ったような笑顔で退室した。
それにフラガは納得できないような顔をして、首を傾げる。
マリューがそんなフラガをじっと見ていることに気づくと、にか、と笑っていった。
「ラミアス艦長、君はどうなの?」
「どう、とは?」
「お偉いさんのために命張ろうってクチ?」
「軍人は、そのような機関ではないはずですが」
「表向きはね。」
「・・・・・・私は・・・復讐とでも言えばいいのかしら。」
「え?」
「なんでも、ないわ。」
「ふぅん。その大きな胸に何を隠してるのやら。」
「少佐、セクハラです。」
「おっと。」
思わず口を押さえるフラガに、マリューは微笑んだ。
******
「君たちは降りろ。」
「「「え?」」」
皆の顔が驚きで見開かれる。
ケイは静かだった。
「本部に行けば強制的に軍人にされる。それで本当にいいのか?」
「それは・・・・・・でも」
「君たちはよくここまで運んできてくれた。本来の役目はもう、ここで終わりなんだ。
それなのに、まだこんなところにいるつもりなのか?」
「・・・・・・ケイはどうするの?」
「俺は残る。」
「ならっ」
何故かわからないが、トールたちは必死だ。
戦争に関わってこなかった自分たちへの責任を感じてきたのだろうか。
ケイが笑う。
「君たちはここにいてはいけないんだよ。」
「でもっ」
「僕はもともと、地球軍パイロットだった。だから、もう覚悟はできている。
だが、君達は一般人だ。そこまでして軍に入る必要はないだろう?
戦争なんて殺し合いだ。そんなところに君達はいるべきじゃない。」
「でも、今までどおり見て見ぬふりなんて出来ない!見ているだけなんて!」
これまでの戦闘で見てきたことは少なからず、彼らの戦争への認識を変えた。
外ではこれほど多くの人が死んでいたこと、苦しんでいたこと。
命を賭けるということ。
死ぬことの恐怖。
けれど、ケイは穏やかに、まるで赤ん坊をあやすように柔らかく言った。
「終戦への道は何も軍人となって戦うことだけじゃない。君たちには選択肢がある。
そうだろう?
今、世界は傷ついている。
食糧難、不衛生による病気蔓延、人手不足による工業運営の停滞。
公共機関すらうまく機能できていないんだよ。
そういうものを手伝う事だって貢献だろう?」
「ケイ・・・・・・」
「俺が出来ないことを、君たちがしてくれるとありがたい。」
「・・・・・・」
08.07.01
あとがき
進んだ(疲